那覇市真嘉比にあった激戦地「大道森(ハーフムーン)」

沖縄県那覇市の真嘉比・安里周辺は、現在は住宅や商業施設が立ち並び、多くの人で賑わっています。
特に真嘉比近辺が土地開発されたのもまだまだ最近のことで、かつては沖縄式の古墓「亀甲墓」が並んだ森で「大道森」と呼ばれていました。

この大道森は、沖縄戦時には旧日本陸軍の第32軍によって陣地として使用されました。

大道森に並ぶ亀甲墓同士を壕で繋ぎ、様々な場所から敵に銃撃できるようにしました。
また、大道森の西側にあった安里52高地(米軍呼称:シュガーローフ)にも同様に陣地壕を張り巡らせ、南西にあった窪地「ホースシュー」には迫撃砲部隊を配置しました。ホースシューはシュガーローフの丘に隠れるような形で守られ、米軍は正面から攻撃することが不可能でした。
ホースシューからはシュガーローフやハーフムーンに向け、迫撃砲の援護砲撃を行います。

日本軍はシュガーローフ・ハーフムーンヒルとその南側にある低地のホースシューを首里の司令部を守る絶対防御ラインとしていました。
このラインさえも超えられれば、首里司令部の南側から回り込まれてしまうためです。

大道森(ハーフムーンヒル)
ここ大道森は沖縄戦の激戦地であった。半月に見えたことから米軍は
ハーフムーンヒルと呼び、攻撃目標としていた。
西側に連なる丘の慶良間チージ(シュガーローフヒル)が米軍に奪取
されたのちも、米軍は首里への攻勢を強め、1945年5月27日、首里の
第32軍司令部は南部へ撤退した。沖縄戦は、首里攻防戦で事実上決着し
ていたが、多くの住民を巻き込んだ南部戦跡の悲劇は6月末まで続いた。
戦後、当地では大規模な開発が行われることがなかったが、土地区画
整理事業の進展に伴い、沖縄戦当時の遺物や遺骨が発見され、平成20年
度に那覇市とNPO団体との協働で市民参加による遺骨収集を行った。
上部に設置している石壁は、土地区画整理事業地内で発見されたもの
で、沖縄戦当時の弾痕がはっきりと残っており、市内から消えつつある
戦争の痕跡を次世代に伝えるべく当公園に移設したものである。
説明版横の薬莢等も、土地区画整理事業地内から発見されたもの
であり、その一部を展示している。

案内看板より引用

現在、「シュガーローフ」周辺は沖縄都市モノレール「おもろまち駅」も造られてショッピングスポットとして発展しています。
シュガーローフの存在を伝える唯一の案内板は、安里配水池のタンク下に設置されています。

また、「ハーフムーン」もかつての森とお墓群は姿を消し、宅地開発されています。
住宅街の中にある「真嘉比南公園」にハーフムーン・ヒルの案内看板と、土地開発の際に発見された遺品の一部が野外展示されています。

記念碑の上部には傷だらけの石壁がはめられています。
これは土地開発の際に見つかった石壁で、銃弾の跡がハッキリと残っています。

発見された遺品も展示されています。
しかし、内部が結露している時があり見難い場合もあります。

シュガーローフ・ハーフムーンでの戦闘は、米軍からしてみると周囲は特に遮蔽物が存在しないため、銃弾の中を突撃していくような戦闘となりました。
神出鬼没に銃弾が飛んでくることに加え、首里高地におかれた砲兵隊からの砲撃やホースシューにある日本軍の迫撃砲陣地からの見えない所からの攻撃により、米兵には気の休まる暇のない戦闘となりました。
また、民間人のふりをして急に襲い掛かってきたり、鉄血勤皇隊の青年が爆弾を抱えて突っ込んでくるなど、ゲリラもいたことから米軍は多くの戦死者だけでなく戦闘神経症患者も多数出たといわれています。

日本軍側からすると、見通しのいい首里司令部からシュガーローフ・ハーフムーンに向けて走る米兵に攻撃できること、沖縄式の墓を穴で結び大規模な壕を造り多角的な攻撃が出来たこと、ホースシューや首里高地からの砲撃支援など、土地の形状を利用した強固な反斜面陣地が構築できていました。
しかし長く続いた戦いで消耗してきた日本軍は、遂にシュガーローフから米軍を追い払うことはできず、シュガーローフが占拠されてしまいました。