黒しばわんこの戦跡ガイド

敵軍を苦しめた「反斜面陣地」

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反斜面陣地

沖縄戦では各地で戦闘が行われましたが、その中でも激戦とされたのが「嘉数高地」と「前田高地」での戦いでした。どちらも現在では公園として整備されていますが、公園内にはトーチカや陣地壕が残されており、激戦が繰り広げられた面影を垣間見ることができます。

米軍の高火力に対抗するために日本軍が行ったのが地形を利用した陣地構築でした。嘉数・前田共に丘陵地帯であったことから日本軍は「反斜面陣地」を構築しました。

「反斜面陣地」は自軍と敵軍の間に丘陵の稜線を挟み、敵軍の反対斜面に構築した陣地です。

反斜面陣地をすることのメリットとして、敵の観測の影響を受けづらくなり配備などの情報を渡しづらくなること・直射火器による砲撃は丘陵を盾にできるなどがあります。

逆にデメリットとしては、自軍の直射火器による砲撃にも影響がでること・敵軍と反対斜面に陣を置くので敵の監視が難しいことがあります。

そのため、日本軍は丘陵の見渡しのよい場所にコンクリート製の監視哨兼観測所を構築したり、丘陵を越えてくる野戦重砲の砲撃に対応する為に地下に棲息部や砲座を構築しました。

沖縄本島の地質には琉球石灰岩という硬い地質があり、空洞部分を棲息部や砲座に利用しました。コンクリートを使用せずに堅牢な陣地が構築できたので、資源の少ない日本軍には節約となります。

このような陣地を線状に配置するのでなく、丘陵毎に置いてまるでいくつかの島のような陣地「島嶼状陣地」として配備しました。

丘陵を乗り越えてくる敵兵に対しては、歩兵の近接戦闘や歩兵用銃火器で対応すると同時に盾としている稜線を死守しました。また、援護射撃として陣地後方に置く主力野戦砲や重砲で敵側の援護を寸断します。

丘陵と丘陵の間を進んでくる敵戦車に対しては、丘陵後方か側面の対戦車で相互にカバーしあい、線状陣地でないながらも火力による線で繋がれていました。

丘陵には複雑に入り組んだトンネルも掘られており、不用意に丘陵の間に入り込んだ敵兵は四方八方から銃弾を浴びせられました。

少ない火力を有効に活用した戦法は敵軍を苦しめ、「死の罠」や「忌々しい丘」などと言わしめました。

長く続いた防衛線でしたが、最後はやはり物量の差が出てきます。

戦車の陣地進入を防いできた日本軍でしたが、それでも敵戦車は強引に陣地内に侵入して陣地内を破壊しました。

丘陵地帯でも浸透戦術に優れた敵軍は、援護射撃を受けつつ徐々に日本側陣地に侵入していきます。地下陣地の出入り口や銃眼等を押さえると火炎放射器で制圧したり、削岩機で穴をあけガソリンを流し込み火を点けるなどで攻略されてしまいました。

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ポチ太郎

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