栃木県栃木市にある大平山には「大中寺」というお寺があります。このお寺は歴史ある古刹であると同時に七不思議が伝えられており、1776年に刊行された怪異小説「雨月物語」の中にもこの寺が元ネタとなっている話があります。これだけ聞くと’’不気味な寺’’という印象を持たれるかもしれませんが、実際に行ってみると山に囲まれたとても静かな寺で、大平山をハイキングしている人たちが立ち寄るスポットとなっています。また、この寺はアジサイ寺としても有名で6月くらいになると参道に咲き誇るアジサイはとても綺麗なのです。
私は小学生の遠足で初めてこの寺を訪れましたが、約20年ぶりに再訪したので今回は七不思議についてをご紹介します。
✅根無しの藤
大中寺の開祖「快庵妙慶禅師」が鬼と化した坊主の霊を弔うため、墓標代わりの禅師の杖がどんどん成長し深く絡みあい凄みがある藤の古木となりました。「雨月物語」の青頭巾の元ネタ。
✅油坂
勤勉な学僧が、夜中に勉強する為の明かり欲しさに本堂の油を盗んだが石段からころげ落ちてしまいます。学僧は命をおとし、この石段を使うと災いに合うと伝えられています。
✅枕返しの間
旅人がこの寺に一夜の宿を乞い、この部屋で本尊の方に足を向けて寝てしまいます。翌朝になり目がさめると、頭が本尊の方へ向けて眠っていました。旅人驚いてその非を謝りました。
✅不断のかまど
怠惰な学僧がサボる為にかまどの中に隠れている内に居眠りしてしまいます。その事を知らずに他の人が火を焚きつけてしまい、学僧は焼死します。その後かまどの火を絶やさないという慣習が生まれたそうです。
✅馬首の井戸
豪族の佐竹太郎が戦いに敗れこの寺にかくまってくれるよう頼みますが断られます。恨んだ挙句に自分の馬の首を切って井戸の中へ投げ込みます。井戸からは馬の鳴き声が聞こえると伝えられています。
✅不開の雲隠
豪族の佐竹太郎の妻が敵に追われこの寺の雪隠に逃げ込み、最期を悟って雲隠で自害します。それ以来、この雪隠は未開と伝えられ、女の生首が出ると伝えられています。
✅東山一口拍子木
大中寺の東の山中から拍子木の音が聞こえると、寺に異変が起こるといわれています。また、音は大中寺の住職にしか聞こえないそうです。